賃金管理

積立不足により退職金制度の見直しをする経営者の増加
昨今の長引く景気の低迷に加えて、2008年の世界同時不況(リーマン・ショック)後は、急激な業績悪化により企業にとって雇用を維持し続けることが難しく派遣切りや整理解雇など様々な労務問題がTVやマスコミなどで取り出されております。また、100年に一度と言われる東日本大震災の影響もあり、景気回復の見通しが立たない中で従業員に月例給与のみ支払うことが精一杯にも関わらず、毎月の資金繰りに悩まれている経営者が数多くいるからです。
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そのため、退職金原資に回すための社内積立が出来ない経営者が多く、積立不足による相談が後を絶ちません。
最近では、退職金原資の積立不足や運用利率の低下の影響により、やむを得なく退職金の水準を引き下げたり、退職金制度を廃止したり、確定拠出年金制度に切り替える経営者が増えています。

分かりやすく、ムダのない、運用しやすい賃金・退職金制度
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20年前のバブル全盛期に作られた退職金規定や曖昧に作られた退職金規定を使う経営者がまだまだ数多くあります。
退職時の基本給に連動した退職金制度がゆえに近い将来、膨大な退職金債務を抱える経営者が後を絶ちません。
膨大な退職金債務の問題は経営していく上で悪影響を及ぼす恐れもあるのです。
経営者側が一方的に退職金の水準を引き下げたり、退職金制度を廃止することは労働契約の不利益変更に該当し無効と判断されます。
(一度、定めた規定は労働契約に該当するので、該当者が発生した場合には決められた支給額を必ず支払わなければいけません。)
※従来の退職金規定から変更や廃止する場合は、従業員全員の十分なご理解とご協力が必要不可欠となります。

また、無意味に退職金の水準を引き下げたり、やむを得なく退職金制度を廃止したりすると従業員様の士気や向上心がなくなり、優秀な人材が退職していく恐れもありますので十分な協議をすることをお勧めします。

次のような経営者からのご依頼が多いです

退職金規定の整備をしたい経営者
退職金の積立不足に不安がある経営者
退職金を支給しない場合(パートや嘱託社員など)の制度がほしい経営者
税制適格退職金制度の移行でお困りの経営者
勤続年数(基本給)制度から成果を反映した制度に変えたい経営者
役員の退職慰労金を考えている経営者

みなし残業代導入事例

みなし残業代導入の設定事例を説明します。
(例)Z社の所定労働時間は1日8時間、週40時間、完全週休2日制です。今月の所定労働時間は168時間(21日 × 8時間)です。

不払い残業代の事例

Q1. Aさんは毎日慣行的に平均して1時間の残業を行っており、今月の残業時間は21時間です。
Aさんの残業代はいくらか?(不払いになっていないか?)を計算してみます。
→ Z社に勤めるAさんには次のような給与が支払われています。

<「固定残業代」の名目で月25,000円支給されている場合>

基本給 役付手当 資格手当 家族手当
200,000円 20,000円 10,000円 15,000円
精勤手当 固定残業代 通勤手当 総支給額
8,000円 25,000円 15,000円 293,000円

まず、1時間当たりの労働時間の単価を求めます。

「基本給」 + 「通勤手当と残業代を除く各種手当の合計」 = 253,000円
253,000円 ÷ 168時間 = 1,506円/1時間

Z社の所定労働時間は1日8時間、週40時間ですから、Aさんの残業時間はすべて法定時間外労働に該当しますので、割増賃金率(1.25倍)を乗じます。

残業1時間当たりの単価は、1.506円 × 1.25 = 1,883円/1時間

みなし残業代の25,000円でカバーできる残業時間は、25,000円 ÷ 1,883円 = 13.3時間分です。

A1. Aさんは、今月21時間の残業を行っているので、7.7時間分の残業代が不足し、
1,883円 × 7.7時間 = 14,499円が不払いとなっております。

みなし残業代の導入事例

それでは、みなし残業代導入した場合の設定事例を上記のZ社と同条件の設定で説明します。

資格手当や精勤手当をへ移行すれば、総支給額は同じですが、みなし残業代が43,000円となります。

<「みなし残業代」の名目で月43,000円支給されている場合>

基本給 役付手当 資格手当 家族手当
200,000円 20,000円 0円 15,000円
精勤手当 みなし残業代 通勤手当 総支給額
0円 43,000円 15,000円 293,000円

まず、1時間当たりの労働時間の単価を求めます。
「基本給」 + 「通勤手当と残業代を除く各種手当の合計」 を所定労働時間で割ります。

235,000円 ÷ 168時間 = 1,399円/1時間

Z社の所定労働時間は1日8時間、週40時間ですから、Aさんの残業時間はすべて法定時間外労働に該当しますので、割増賃金率(1.25倍)を乗じます。

残業1時間当たりの単価は、1,399円 × 1.25 = 1,749円/1時間

みなし残業代の43,000円でカバーできる残業時間は、43,000円 ÷ 1,749円 = 24.6時間分あります。

Aさんが毎日1時間の残業を行ったとしても十分みなし残業代の範囲(24.6時間分)内に収まりますので、残業代の不払いは発生しません。

まとめ

「不払い残業代の事例」と「みなし残業代の導入事例」では、14,499分の賃金支払いの違いがでます。

このように同じ総支給額でも賃金設定の仕方によって大きく変わってくるものです。
みなし残業代制度を有効に活用すれば無駄な経費も抑えられ後々、不払い残業代を請求される問題になることはありません。

一度、賃金体制を見直してはいがでしょうか?

注)みなし残業代の導入は、就業規則の改訂と従業員の同意が必要となります。
また、労働条件の不利益変更に該当する場合がありますので、まずは専門家である当事務所へご相談ください。